会社が情報漏洩やハラスメントなどによって損害賠償請求を起こされると、莫大な損害賠償金を支払わなければならない場合があります。そのうえ、会社のイメージダウンによって経営状態が著しく悪化してしまう恐れもあります。少しでも被害を最小限に抑えるためには、損害賠償をカバーしてくれる保険に加入するという方法があります。

この記事では使える保険の種類や内容についてご紹介したいと思います。

1.情報漏洩による損害賠償保険

情報漏洩による損害賠償保険

冒頭で述べたように、企業は情報漏洩などが原因で起きる様々な被害を少しでも軽減するために、保険の活用を視野に入れる方が良いでしょう。保険に加入していれば、会社のイメージダウンは避けられないとしても金銭的な被害だけでも軽減できます。

最近の保険商品の中には損害賠償だけでなく、費用損害(情報漏洩に関する調査費用や被害者への見舞金、謝罪のための広告費用などの費用)や、逸失利益(事業停止などで得られなくなった、本来なら得られたはずの利益)を補償するものもあります。実は損害賠償額よりも費用損害の方が多くなるケースもあるので、保険でそのような被害がカバーされるのは心強いです。

情報漏洩関連の保険の例

情報漏洩インシデントをカバーする保険の例をご紹介しましょう。

・東京海上日動「個人情報漏えい保険」
従業員やアルバイトの個人情報、廃棄された記録媒体からの漏洩なども補償対象にしているのが特徴です。また、法人情報の漏えいかその恐れがある場合の損害、クレジットカード番号漏洩による賠償損害もカバーされています。補償内容は以下の通りです。

項目 賠償責任部分 費用損害部分
支払限度額 1請求・保険期間中
500万円~10億円
1事故・保険期間中
100万円~1億円
免責金額 1請求
0円または1万円~
1事故

(東京海上日動データ参照)

・三井住友海上「サイバープロテクター」
外部と内部に起因するリスクを幅広くカバーした保険です。調査費用や広告宣伝費用、見舞金などの費用損害も補償している他、海外で提訴された問題もカバーしています。エコノミー、スタンダード、プレミアムの3つのタイプから保険をかけられますが、それぞれの補償内容については公式HPを確認できます。

2.ハラスメントの場合の損害賠償保険

ハラスメントの場合の損害賠償保険

最近はセクハラやパワハラなどの様々なハラスメントがメディアで取り上げられていますが、ハラスメント被害が数千万円とか億単位の被害を生むことがあります。このような不当行為に起因する損害賠償請求に備える保険は「雇用慣行賠償責任保険(EPL)」と呼ばれます。

現在ハラスメントなどの会社からの不当行為に関連した保険商品の販売が急増しています。特に中小企業からのニーズが増えています。例えば「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」によると、ハラスメント関連の保険特約の販売件数は、2017年度と前年度を比べると5割も増えています。

雇用慣行賠償責任保険の例

ハラスメント被害に備える雇用慣行賠償責任保険をいくつかご紹介しましょう。

・三井住友海上火災保険株式会社:雇用慣行賠償責任補償
不当解雇や、セクシャルハラスメントなどの雇用関連の紛争による損害賠償リスクを補償します。保険料の一例は以下の通りです。

支払限度額 免責 縮小支払割合 年間保険料
5,000万円 なし 90% 174,000円

・あいおいニッセイ同和損保
「雇用慣行賠償責任補償特約」は同社の保険である「ワイドプラン」に自動セットされます。セクハラやパワハラ、不当解雇など従業員からの突然の損害賠償請求に対応できる内容になっています。

3 .まとめ

情報漏洩とハラスメントというタイムリーな問題に関する保険を紹介しました。企業にとって業務上過失であれ、悪意のある犯罪であれ、従業員や会社業務に起因する損害賠償請求は大きな問題となります。状況によっては会社が倒産に追い込まれるほどの損害も出る恐れがあるので、保険に加入しておくのは良い対策になります。